話は15年前。大学時代まで遡ります。仲の良いグループの中に1人変わった子がいました。
彼女は霊感が強いと評判で、いつも明後日の方向をぼんやり眺めては何やらぶつぶつと呟いてみたり
いろんな人から心霊相談を受けては霊視したりしていました。
私はいつも彼女から『あなたは私より霊感が強い。まるで磁石の様に霊と引き寄せあっている』と、羨望の眼差しを受けていました。
しかし私自身何の心霊体験もなく。そもそも幽霊とか苦手だし…正直気持ち悪かったので適当に返事をするだけであまり相手にしていませんでした。
無事に楽しい4年間をすごし卒業をむかえましたが、時代は超氷河期と揶揄された頃で就職先はなかなか見つからず、
内定をもらえても取り消されたり、入社までに倒産してしまったりする程の不景気でした。
三流大学卒の特にコネも資格もなかった私は当然の如く就職浪人となり、
地元の小さな商社に契約社員として入社できたのは大学卒業後の6月になってからでした。

入社して3ヶ月。仕事に慣れ、同僚とも打ち解けた9月のある日。実家の固定電話にあの霊感女から連絡があったのです。

友人『PHS番号分からなくて…急に実家に電話してごめんね。いきなりだけど…あなた就職決まって今仕事してる?』
私『そうだよ』
友人『12階の階段側にある両開きの扉がある部屋で、入ってすぐカウンターと右側が応接セット。
パキラにベージュのソファーとガラス机。ああ、机の花はあなたが毎日飾っているのね。チェックの制服がよく似合っているわ。
窓際にあなたを含め3人の女性が座ってて、一番奥に大きな机と椅子が…上司さんの席かな…』
私『…そうだね』
友人『ちょっと、FAX送るから確認して』
届いたFAXを見るとまるで見てきたかのような正確さで私の職場の配置が描かれていました。彼女は私がどこの会社に勤めているか知りません。
というか、入社して3か月、私はまだ誰にも就職した事すら話していませんでした。
通常は驚く所でしょうが、4年間もこういった「偶然の一致」を見せつけられてきた私はすっかり慣れてしまっていて何の驚きも動揺もありませんでした。
数分後、こちらから彼女へ電話。
友人『どうかな』
私『相変わらず寸分の違いもなくて気持ち悪いわ』
友人『すぐにお祓いしてもらったほうがいいよ。あ、あなたじゃなくて端っこの席にいるショートカットの子ね』

翌日、出社した私はお昼休憩に2人の同僚と上司に友人からの話を伝えました。確認の為隣の部署にいる1番古株のお局様にも同席してもらいました。
私達新人3人と上司は新部署設立の為雇われたまったくのよそ者で、過去に会社で起こった事など何も知らなかったのです。
霊感女曰く。

この部屋は数年前まで会社の上層部の男性が使用していた。その男性は何か事件を起こし、この部屋で自殺した。
浮かばれない魂はいまだに部屋の中をさまよい歩いており、今この部屋で働いている最も弱い者を引き込もうとしている。
が、私の霊感が強すぎて何もできず、私が部屋にいる間は観葉植物の物陰に隠れ、じっとターゲットを睨み付けている。
との事で。私的には気にしないが、万が一本当にこの部屋で自殺した人がいるなら何も知らずに働くのは気分が悪い、
事前に話してほしかったし、神棚でも置いてお札貼ってまつったほうがいいのではないか?

私が話終わった途端、お局撃沈。ガタガタと震え泣きながら教えてくれました。
5年前、ここは役員室で当時の経理部長が使っていましたが、横領がバレてこの部屋で首を吊って自殺したのだそうです。
その後この部屋は何人か他の管理職員が使いましたが、次々と事故に遭ったり大病を患ったりで縁起が悪いという事になり、しばらくは空室に。
この度私達を採用するにあたり、4人共よそ者だから死んだ部長も手出しはしないだろうという事で配置されたのだそうです。
同僚1『ショートカットって私…?』
同僚2『天井の不自然な穴は首を吊るした跡で…』
上司『僕が今座ってるこの机からよじ登った…』
私『で、友達曰く今はそこの観葉植物あたりにぼうっと立ったり、部屋中をぐるぐる歩きまわったりしてるそうですよ。』
とどめに放り投げたあの正確無比なFAX。
い…いやあああああ!!!
叫び泣く同僚2人。ガタガタ震えながら席から飛び出す上司。

みんなで総務に抗議した所何の冗談だとか叱られるかと思いきや部長に社長にお偉い様方総出で平謝り。
その日中に部屋を変えてくれました。後日、社長の知り合いで名のある方にお祓いしてもらったのですが、その方もこの部屋はかなりヤバい。
何事も起こらなくてよかったと仰っていました。

その後、あの部屋は倉庫になりましたが荷物を取りに行く用事がある度に誰が行くかで揉めています。"