今から10年以上前、当時の私は20代前半でした。
大学を卒業して、まあまあいい企業で働いていたのに
何だか違うなぁとさっさと辞めて、大学時代にアルバイトをしていた店に
フリーターとして出戻っていました。
そんな私の身勝手ともいえる勝手な行動は、教職で封建的な父の怒りにふれ、
見事なまでの親子喧嘩の末、私は家を出て一人暮らしをすることになりました。
住んでいたのは、どこにでもあるありふれたワンルームマンション。
入居者の大半は、近くの大学に通う学生だったようでした。
フリーターとして朝から深夜まで働いていた私は、同じマンションに住む人とのかかわることはありませんでした。

 仕事を終えて帰宅するのはいつも深夜でした。
同じ職場で働く仲間にも一人暮らしの人が多くて、仕事帰りにお互いの部屋に寄り道することは
日常でした。
いつも誰かの部屋で、お疲れ様~と言いながら、少しのお酒を飲んだりしながら
いろんな話をしたりしていました。

 何月何日で季節はいつだったのか、そんなことはもう忘れてしまったのですが
その日の仕事終わりに、私の部屋に何人かの仕事仲間が寄っていくことになりました。
コンビニでお酒や適当なおつまみを買って、私の部屋にみんなが集まったのは日付が変わった頃だったような記憶があります。
ほどよくお酒を飲んだ後、仕事仲間たちはそれぞれの家に帰っていきました。
ただ、一人だけ寝てしまった仲間を残して。
みんなが帰った後片づけをしていると、彼は起きてきました。
「ごめん。寝ちゃってた。もう2時も過ぎてるし泊めてよ。」と言われた私は、
「いいよ。家遠いし、明日も朝から仕事だしめんどくさいもんね。」と答えました。
それから、いくらかの時間、彼と仕事のことについて話をしていました。
だんだん眠たくなってきました。
「そろそろ限界~寝る!」というよくわからない宣言をして、私は寝ることにしました。
彼は、しばらくは起きていたようでしたが、知らないうちに寝てしまったようでした。
二人とも寝てしまったのです。

 どのくらい眠ったのかわからないのですが、私はふと目が覚めました。
照明を消した部屋は暗く、外のほうに目をやってもまだ暗い空でした。
まだ、朝じゃないんだ、もう少し寝よう。と、なんとなく部屋を見回しました。
すると、部屋の隅に一人の女の人が座っているのです。
眠たそうに下を向いて座っているのです。
その女性は、その日私の部屋に寄っていった仕事仲間のように見えました。
私は、疲れて飲みすぎたのかぁ…そうか、彼女も泊まっていったんだ。
そんなふうに思いました。
横になればいいのにな、と、彼女に何か言葉をかけたような感覚だけを覚えています。
でも、彼女は黙ったまま、姿勢を変えることなく、ずっと黙って下を向いて眠っているようでした。
私も眠かったので、そのまま眠ってしまいました。

 私が眠っている間、泊まっていたもまた目が覚めた見たいでした。
朝になると、彼は、「寝てる時なんか変な感じだったんだけど…
○○さんも泊まってたんだね。部屋の隅に座ってるから、ちゃんと横になればいいのにと言ったのに、彼女、黙ったままでさ。」と言うのです。なんと、私と同じことを見て、体験をしていたのです。

 私たち二人はそのまま仕事に出かけ、一部始終を職場で話しました。
誰もがそんなことはないと笑いました。でも、まったく同じ体験をしてしまった私たち二人には
絶対本当のことだと今でも信じています。
そういえば、その日、私の部屋にいたであろう彼女は、体調が悪くて仕事に来ませんでした。