それは、4年前。当時付き合っていた彼と沖縄旅行に出かけた時の話です。

彼とは、遠距離恋愛でした。
そのため、月に1回のデートはお互いに行き来するか、どこかに旅行にいくかしていました。
確かそれは6月の旅行で、私が長年行きたがっていた沖縄に連れて行ってくれるとのことで楽しみにしていました。
彼は、全て手配してくれました。
「沖縄はレンタカーで移動がスムーズらしい」ということで車も用意してもらい、沖縄を満喫するつもりでした。

海でひたすら遊び、いろんな観光地もめぐり、美しく綺麗な景色とおいしいものをたくさん食べてとても楽しい時を過ごしました。
着いて3日目だったでしょうか?
彼が、「ドライブがてら南のほうへ行ってみよう」と提案され、ドライブすることになりました。

しかし、南へ行けばいくほど、私は少しづつ気分が悪くなってきました。初めは、車酔いかなと軽く考えていました。
確かあたりに民家のないアスファルトの道路が長く続いたと思います。
彼とたわいのない話をし、笑いあう余裕がその時はあった気がします。
でも、どこかで気分が悪く、本当にこの道でよいのかと不安に思っていました。

ふっと道が開けて、白い壁の民家が並ぶ集落にでました。
私は、そこに出た瞬間、「ここで引き返すべき」と直感しました。
と同時に、ここに住んでいる人たちが「なぜ普通に暮らしているのか?」と強い疑問を抱いたのです。
私には、はっきりと旧日本兵が銃を持って歩いている姿が映っていました。
彼らは、この周辺を歩き回っている!と強く強く思ったのです。
目で見えているわけではなく、肌で感じるというのでしょうか。
彼に「引き返そうよ」と伝えたのですが
「なんで?面白いじゃん」と言われ、肌の感覚を伝えようもなく、私の勘違いかもしれないなと何も言い返せませんでした。

しばらく行くと、集落を抜け、人けのない草も茂った道になりました、
彼が「岬に行く」といい、その方向へ車を走らせました。
しかし、私の気分はますます悪くなり、彼に引き返すことを提案しました。
「もうちょっとだから」何も感じない彼がこれほどうらやましかったことはありませんでした。

岬に行く途中で、サトウキビ畑がありました。
サトウキビ畑をみていると、
サトウキビをかき分けて、防空頭巾をかぶった人たちが煤まみれになって走っていくのを感じました。
「絶対幻覚だ。テレビの見すぎだ!」と心の中で繰り返しました。
そして、草道の先にその岬はありました。
「降りようよ」「!!!!」私は絶対無理だと思いました。
「いいじゃーん」と無邪気に降りた彼をみて、本当に鈍感は素晴らしいと思いました。
結局、気分も悪かったこともあり、いったん後に続いて降りることにしました。

降りた途端、自殺防止の旗が目に入り震えあがりました。
そして、きれいな景色を眺めながら、視界の隅で岬から人が落ちていく影を2~3体見ました。
もちろん、誰もいないので実際に落ちたわけではなく、ただ目で見えたのでした。
彼は希望が満たされて、満足したらしくやっと帰路についてくれました。

私的には、即行でホテル近くに戻るつもりでしたが、岬付近で彼は「おなかすいた。ご飯食べたい」と言い出しました。
「!!!」こんなに気持ちが悪い場所で逃げ出したいのに、おなかすいたとか信じられませんでした。
私の様子がおかしいことに気が付いているはずなのに、断固「ご飯にする」と言い張る強さはすさまじかったです。

仕方なしにひめゆりの塔付近で昼ご飯を食べることにしました。もちろん、私は食欲なしです。
「なにをそんなに感じるのかね~」と言いながらかつ丼をほおばる彼を、睨み付けました。

そして、今度こそ帰路についたところ、ある一定のラインを超えた瞬間、
気持ち悪さは突然なくなりました。

あれは、いったいなんだったのか
ただ言えるのは、次に沖縄に行くときは、南のほうにはいかないと決意したということです。