これは私が小学生6年生の時の話です。
その時私は京都で母と二人で2階建ての集合住宅に住んでいました。
その建物は少し変わっていて、
一つの住宅が一軒家のように階段があって2階建てなのですが、
ベランダはつながっていて、長屋のような感じの住宅でした。
家の作りも1件1件違ってはいますが、すべての家がベランダでつながっているのです。
いつも学校から帰ると私は、首元にぶら下げている鍵を使って部屋に入る、いわゆる『鍵っ子』でした。
もちろん家に帰っても母親は仕事に出ているため誰もいません。

その日も同じように学校から帰ってきて鍵を使ってドアを開けました。
開ける瞬間妙な胸騒ぎがしたのですが、そんなことはお構いなしに部屋のドアを開けました。
夕暮れ時。少し陽も傾いているような時間でした。
いつも通り誰もいない部屋。
ただいま、と言いながら入りました。
部屋の雰囲気が妙だ、と小学生ながら思ったのです。
普段とどこも変わりません。なのになぜかおかしいと思ったのです。
それは階段の上にある自分の部屋にあるような気がしました。
ランドセルを背負ったまま、恐る恐る螺旋状に曲がるその階段を一歩一歩登って行きました。
登り切った先に正面と右側に入り口があり、
部屋は別れてはいますが、六畳ずつの部屋があり、仕切り等はありません。
私の部屋は右側の部屋になります。
入ったその右奥には押入れがあり、ちょうど螺旋状に曲がる階段の最初の段の真上にあるような形です。
登り切り、部屋に入るといつもはきっちり閉めている押入れの襖があいているのです。
そこから妙な気が漏れている気がして、恐る恐る近づくと、
その奥から黒い靄に包まれた女の子が押入れ付近の入り口に素早く近づいてきたのです!
びっくりした私は腰が抜けたように座り込んでしまいましたが、
なんとかその場から離れようと、しかしその女の子から目は離せずに、
必死にそのまま後ろに後ずさりました。
女の子は日本人形のようなおかっぱで、着物を着ているようでした。
3~4歳くらいでしょうか。
その場でじっと私を見つめていました。
その後、口をパクパクさせて何かをつぶやいたかと思うと私の方に飛び出してきました!
わっ!と体を硬直させた瞬間、私の体をすり抜けて、そのまま下の階へ、つまりは床をもすり抜けて消えてしまいました。

その日にあった出来事は、誰にも言っていませんでした。
母にも心配をかけたくなかったからです。
その後は何事も起こることなく日々を過ごしていたのですが、
女の子が消えてしまってからちょうど1週間後、あの大地震が起きたのです。
阪神・淡路大震災。
多くの方が亡くなり、関西地方に大ダメージを与えたあの大震災です。
地震断層の上にあるといわれていた私の家は幸いにも、大きな被害はありませんでしたが、
かなりの揺れに体が硬直して動けなかったのを今でも覚えています。
関連しているわけではないかもしれません。
ですがその時、女の子がつぶやいた言葉がふと思い出されたのです。

『わざわいがふってくる』

口元が、そういっていたのです。

その後女の子が現れることはありませんでした。
いったいあの女の子はなんだったのか。
今でも私にはわかりません。